公開講演会「Fanny Herselfが映し出す成功物語の諸相——人種、性、そしてパーソナリティの観点から」、「父と母なる神—インクルーシヴな英訳聖書の試み—」
INFORMATION
横山晃氏の講演はEdna Ferberの作品、Fanny Herself(1917)を成功物語として読み、作品が提示する人種や性の問題に焦点を合わせる。ウィスコンシンの小さな町からシカゴへと移るユダヤ系の主人公Fannyは、デパートでの勤務を経て社会的に認められるに至る。成功を収める一方、Fannyにとって、「モンスター」と呼称されるデパート事業の拡大が低賃金で働かされる女性労働者を生み出す社会的状況は見逃せない問題であった。成功というアメリカ文学における鍵概念をプロットの基礎としつつ、本作がどのような成功の形を提示しているのか考える。
続けて寺澤盾氏の講演では、近年の英訳聖書が取りあげられる。20世紀以降、現在にかけて、新たな英訳聖書が次々に刊行されている。その要因の一つとして現代英米社会でおきている変化が挙げられる。なかでも、重要なのがポリティカル?コレクトネスである。これは、社会的マイノリティーを含めたインクルーシヴで差別のない社会や言語の構築を目指すものである。こうした時流を反映して近年出版された英訳聖書では差別的な表現へのさまざまな配慮が見られる。本講演では性に関する差別表現にフォーカスし、インクルーシヴな言語を志向する新たな英訳聖書の試みを見ていく。
講師
明治大学文学部専任講師
横山 晃(よこやま あきら) 氏
本学文学部英米文学科卒業後、2011年、同大学院文学研究科英米文学専攻博士前期課程修了。同課程の最優秀修士論文賞であるTN賞を受け、博士後期課程へ進学。2014年、米国テキサス大学ダラス校人文学部博士課程へ留学し、2021年、同大学PhD取得。明治大学文学部兼任講師や慶應義塾大学法学部兼任講師をへて、2021年から本学文学部文学科英米文学専修の助教を務める。2023年、明治大学文学部文学科英米文学専攻の専任講師に着任。19世紀末から20世紀中葉に至る広義のモダニズム文学と、その背景の米国文化事情を探る気鋭の研究者として知られる。主要論文として、“‘Camping’ the Gay Nineties : Reading Mae West as a Female Impersonator in the 1930s”(The Journal of the American Literature Society of Japan, 2021)、“Gertrude Stein’s Dispossessed Subject : Eating, Vomiting, and Excre(a)ting in Tender Buttons”(Studies in English Literature, 2020)など。
青山学院大学文学部教授
寺澤 盾(てらさわ じゅん) 氏
東京大学文学部英語英米文学科を卒業後、同大学院人文科学研究科英語英文学専門課程修士課程修了。米国ブラウン大学大学院言語学科へ留学し、1989年、同大学PhDを取得。一橋大学法学部専任講師や東京大学教養学部助教授をへて、2010年、同大学院総合文化研究科教授に就く。2021年からは青山学院大学文学部教授。日本を代表する英語史の専門家として知られ、2019年から2021年まで日本中世英語英文学会の会長を務める。主著として『英語の歴史:過去から未来への物語』(中公新書 2008)、『聖書でたどる英語の歴史』(大修館書店 2013)、『英単語の世界:多義語と意味変化から見る』(中公新書 2016)、Nominal Compounds in Old English : A Metrical Approach(Rosenkilde and Bagger, 1994)、 Old English Metre : An Introduction(University of Toronto Press, 2011)など。
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